皆さまこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
暑くなってきましたね~ 蒸す日も増えてきました。
さて、ご質問をいただくことに、ほかの歯科医院さんで、抜くしかないと言われたが、ほかに方法はないのか、というものです。
結論を先に申しますと、①どの歯科医師がみても抜歯だろうというケース②歯科医師なら抜歯の理由に納得できるが、常識的な感覚とかけ離れていて理解されない結果、まるで悪者のように扱われてしまうケース③抜歯も非抜歯も考えられるケース④まったく抜歯の必要がないケース のおおむね4通りかな、と思います。
①ですが、歯が激しく折れたり根まで割れたりしているの場合が多いように思います。患者様も納得される場合がわりと多いです。痛みが無くても、細菌をそこで育てているようなものですからね。
③はいろいろです。④はひどいですね、同業者として恥ずかしい限り。
正直、一番大変なのが②です。ではその例を挙げます。
(1)大学病院時代の話です。Aさんが抜きたくないのは、半分埋もれている親知らず(下の親知らず)で、歯が黒くなっている状態。抜きたくないとのことでわざわざ大学病院に来院。むしば外来が、以前、保存科という名前だったこともあってか、患者様は、半狂乱のように主張されていました。「虫歯だけとれば、削ればいいのに!なぜですか!」 上の先生と2人1組で、新患係をやっていた時です。上の先生は、「抜歯が適当です。虫歯の治療では治りません」と毅然としておっしゃっていました。豊富な知識と経験に基づいた毅然とした態度に、憧れをいだいたのを覚えています。
自分なら、あそこまで言い切れないと思ったからです。
いったい、半分埋もれた親知らずの虫歯。なぜ抜歯なのでしょうか?
まず、虫歯が見えるところにあるだけとは限りませんし、その歯を私も実際に見ましたが、歯グキの中に埋もれている部分も、黒いのがのぞいてまして、削る治療で虫歯をとりきれるとも思えませんでした。なので、虫歯をとりきれない可能性がある時点で、治らない事が確定してしまいます。
また、歯グキも腫れ、いわゆるオヤシラズの炎症になっており、抜かずに改善するとも思えません。また、仮に虫歯をとりきれたとしても、場所的にきちっと磨くのは不可能です。つまり近いうちの再発が確定しています。
ただ、一般の方の感覚はどうでしょうか?
もちろん虫歯はとりきったほうが良い、と思われるでしょうが、「特にひどいやわらかいところ、特にひどい黒いところをとりきれば」「ある程度の成果は期待できる」・・・なんて思っている方のほうが多いのではないでしょうか。残念ながら、とるべきところを少しでもとらなければ、必ず虫歯はすすむし、再発します。
「きちっと磨く」とは何か?一般の方の感覚は、毎日毎食後、そこを意識して、歯ブラシを入念にする。うがいもして仕上げる。
ではないでしょうか? まったく違います。少しでもプラークや食べかすが、歯グキの中にでも残っていれば、磨き残しです。
細菌はすごく小さいのです。簡単に繁殖します。
(2)例をもうひとつ。やはり大学病院の時の話しですが、根の治療に使うゴムのシートが、歯が小さいか短すぎて(補強もできず)、そのゴムのシートがかけられない歯がありました。膿んでいるので根の治療が必要ですが、なんと!
その正確な治療に必要な、ゴムのシートが使えない、かけられないから、という理由で、抜歯が適当という診断、説明になっている例を目撃しました。その方はあっさり納得していましたが。
しかしふつうは、これは、一般の方には到底納得できないと思います。
でも、学術的には、正しいと思います。根の治療は、できる限り清潔に、汚染されない環境を目指してやるものだからです。
あとは・・・現代医学の限界、まだ知られていない事実、じつは一般の方の感覚が正しかった、ということがまったくないとは言えない、ということが、希望を抱かせてしまっています。
だって、誰だって、水泳のクロールは、足を激しくバタ足したほうが進むと信じてたと思うのですが・・・そうでもないと最近判明。なにせ、わたしたちのまわりをただよう物質だって、ほとんどがわかっていないというではありませんか。
やはり、説明をしてさしあげ、選んでいただく。それしかないのかもしれませんね。
では今日はこのへんで。ごきげんよう。