大学でやっていること

皆さんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

寒くなってきましたね。

私はと言えば今朝、肋間神経痛になり、寒さをイヤというほど実感しました。。。

 

さて、最近、私が大学時代に習った先生が、教授になり、自分のことのようにうれしかったです!

(う蝕制御学分野 島田教授です)

誰にでも優しい先生でした。男女、年齢、国籍、問わず優しかった。

 

わたしが、教養学部からようやくお茶の水の学部にあがって、歯の模型をはじめてタービン(ドリルのようなもの)で削る実習の説明のデモのとき、先生がちょっと笑って

『やっと歯医者っぽい実習でしょ。』とニッコリ笑って我々学生に、学部進学おめでとう、という気持ちをもって接していらっしゃるのかな、とうれしくなったのをハッキリ覚えています。

私のようなモッサリした男子学生のことも、よく見てくれたのを感謝しています。

・・・心の底から応援しています。

 

さて、大学ではどんな研究をしているのかとちょっとお話しいたしますと、私たちがムシバになったとき、現在は白い樹脂(レジン)でつめるのが主流ですが、そのレジンの組成(構造、どんな成分の配合にするか)によって、頑丈さや、つめやすさが変わってくるので、それを何千回も機械で力をかけたりして、実験しているのです。すごいですよね。また、そのレジンは、歯とくっついているのですが、その仕組みとしては、レジンタグというイカリのようなものを歯の中に作って、表面的な接着だけでなく、強固なくっつきをするようになっています。その接着剤や、表面処理剤の性能、相性など、そういったことが日々研究されているのです。

 

そもそも、つくづく思うのは保険がきく白い樹脂(レジン)を臨床応用された故総山孝雄先生らは、人類の生活の質を大きく向上させたと思います。それまでは水銀(アマルガム)で詰めるのが主流でしたから、色も違う、危険性も違う。大違いです。

だれだって白い歯がいいに決まっていますもんね。

あと、レジンはあえて難点を言えば、変色してしまうことですが、それはさておけば、スキッ歯の人(上の前歯の中心があいちゃっているひと)も、実はレジンで結構みばえよく治るんですよ。

かくいう私が、昔、町の普通に通っていた歯医者で、ためしに言ってみたら、「レジンで治りますよ」といわれて、キレイに治って衝撃をうけました。

 

・・日本の大学機関はまるでダメみたいにノーベル賞受賞シーズンのたびに言われますが、私はそんなことはないと思います。

大学の先生たちは、研究、臨床、教育と大忙しですが、臨床や教育をやっていらっしゃるからこそ、急にひらめくことだってあると思うのです。また、臨床をしながらだと、でてきた材料などを実際に自分で使ってみることもできます。また、患者さんの生の声も聞けます。

 

実際に私が医局に在籍させていただいた時、同僚や上に立つ先生は、よく、〇〇の材料はいいね、とか、〇〇は特徴がこうだ、とか、実際にご自分で試行錯誤しながら、すすめていらっしゃいました。〇〇って、もしかしたらこういう可能性がある気がするんだよね、とか。

 

それを医局の仲間とカンファレンスしたりして、また、研究費の審査があったりして、なるべく税金の無駄がないようにすすめていく過程が、そんなに悪いことなのでしょうか。有効な税金の使い道として、むしろ正しいと思うのですが。

 

日本にだって天才はたくさんいます。昔から、神経をとって、根っこの治療の時に、根の正確な長さがわからず、レントゲンから推測するしかなかったのですが、小林先生という天才は、歯は電気を通さない。しかし歯茎は電気を通す。だから微弱な電流をながして、通電した瞬間の距離が根の長さだ!などというものすごい装置(今では一般的でどこの歯科医院にもあります)を発明されました。その装置のおかげで、根の治療の精度は大幅にあがりました。いわゆる電気的根管長測定器、です。

アシストにつかせてもらったことがありますが、まさに天才肌の先生といった感じでした。

 

・・これからも日本からもドンドンこうしたすごい発明がでるはずだと期待しています。

まあメディアも本心かどうか別として、お決まりの視聴率をとれる内容なのかもしれませんが・・

 

え?私は何をしていたかって?

私は、レーザーを使った漂白の実験のお手伝いをさせてもらっていました。来る日も来る日もウシの歯と漂白剤で実験をして、色の変化の違いを記録したりしていました。ウシの歯も有効利用されているんだなあ、と感心したのを覚えています。

 

そこでちょっと頭の体操です。

色の変化として、どれくらいなのかを調べるとしましょう。

明るさをL、赤さをa、青さをb、とします。

 

ある漂白剤とあるレーザーをつかって、10秒レーザーを当てる実験をします。

もともとの数値はL 40 a0 b0 です。 こんな感じで3回記録したとします。

 

1回目 L 50 a5 b8

2回目 L 46 a5 b11

3回目 L 42 a11 b5

 

つまり漂白による変化は

1回目 L 10 a5 b8

2回目 L 6 a5 b11

3回目 L 2 a11 b5

 

平均でL6 a7 b8  となります。

話を簡単にするため、3回の実験ということにしてますが、実際は20回くらいやった記憶が。

 

そこで、データとして、平均の変化である L6、a7、b8について、学会発表しました。

 

すると、結構、高名な別の大学の大御所先生が、こういう風に言ってきたのです。

「明るさLと、赤さa、青さbはそれぞれ違う方向(ベクトル)だから平均をとること自体意味がないよ」

 

・・・さて、皆さんはどう思いますか?

 

そう。答えはもちろん!平均をとるのは意味があります!

ベクトルとスカラーの違いですね。

ここで平均をとっているのは、ベクトルの大きさであるスカラーなので、変化の方向ではなく、

変化の大きさについて議論しています。平均をとっています。

その先生は、ベクトルとスカラーがごっちゃになって、意味がない、といってしまったのだと思います。

 

・・そこで私は、当時、こう反論しようかと思いました。

「東京からどれだけ移動できるか新しい乗り物を評価するとき、北海道まで移動できたのと、大阪まで移動できたのと、沖縄まで移動できたのをくらべるとき、東京からの距離をキロになおして、平均をとった場合、それでも意味はないんですか」と。

これもベクトルが違うだけで、スカラーの平均の話です。

 

ただ、その時の同僚に小声で相談した結果、こういわれました。

『やめときな。大御所だ。にらまれるぞ。あの先生だって、質問しなきゃいけないから無理やり質問してんだからさ。』

私は、ムッとしながらも、矛をおさめました。ベクトルとスカラーも分かっていないのに学会で質問として通用するなんて、、、

高校の範囲だよ、、、と。何日も費やして頑張った実験を、間違った知識のもとに影響力のある人がクサしても反論できない。。。

 

こうしたところは、確かにわるいところかもしれませんね。質問する人が決まっていたりすると、こういうことが起きるのかもしれません。

救いだったのは、あとから、別の先生が、「あんな質問はナンセンス、気にしなくていいよ」と言ってくれたことです。

 

あのまま質問して、恥をかかせていたら、どうなっていたことか。(冷や汗)

だから、下町ロケットとか、半沢直樹が流行るんだろうなあ。実際は言えません!ってね。

 

では、みなさん、ごきげんよう!!

 

 

 

 

この記事をシェアする